今日は薄い白い雲。
風と雲があるうちは涼しさ。
いよいよ梅雨が本格化、そんな雰囲気の佐賀市。
梅雨時としては過ごしやすかったこの6月。
今日の仕事終わりはこちら。
「宮崎駿監督作品 風立ちぬ」
宮崎駿監督最後の劇場作品。
私は「風立ちぬ」の大ファン、堀辰雄氏原作の方の。
見終わり、どうしてタイトルが「風立ちぬ」なのか。
その疑問が拭いきれず。
しかしながら、さすが宮崎監督。
素晴らしい表現も散見。
「夢」
他人とつながる夢。
「自然描写」
雨、雲、日の光、風、地震。
そして戦争。
何より印象的なのは、雪。
富士見高原病院(療養所)がモチーフだと思われる一連のシーンは、
この作品の中で唯一感情移入した場面。
全体の中で最も原作に近づいた描写。
しかしなぜ、主人公は「菜穂子」なのか。
「堀辰雄 風立ちぬ」の主人公の名は「節子」
「菜穂子」は堀辰雄氏のその後の作品。
「宮崎駿 風立ちぬ」での描かれ方は明らかに「節子」
どちらにしても、いくらなんでもこの血の吐き方はないだろう。
それはともかく、
冒頭の夢のシーンでは、この先見るのを止めようかと思いましたが、
「堀辰雄 風立ちぬ」として捉えなければ、色々と考えさせられる作品。
繰り返しになりますが、
なぜ、宮崎監督は「風立ちぬ」というタイトルにしたのか。
戦前の結核と言う不治の病。
高原のサナトリウムでの新婚生活。
終わりへ、少しずつそして確実に進む幸福。
「私をじっと見つめたかと思うと、それを再び伏せながら、
いくらか上ずったような中音で言った。
「私、なんだか急に生きたくなったのね……」
それから彼女は聞えるか聞えない位の小声で言い足した。
「あなたのお蔭で……」
「……あなたはいつか自然なんぞが本当に美しいと思えるのは
死んで行こうとする者の眼にだけだと仰おっしゃったことがあるでしょう。
……私、あのときね、それを思い出したの。
何んだかあのときの美しさがそんな風に思われて」
そう言いながら、彼女は私の 顔を何か訴えたいように見つめた。
「私がお前の傍に寄ってゆくと、殆ど聞えるか聞えない位の小さな声で、
「あなたの髪に 雪がついているの……」とお前は私に向って云った。」
総じて、堀越二郎氏の風立ちぬかも知れませんが、
堀辰雄氏の「風立ちぬ」ではない。
「いざ生きめやも」
死ななかったものは「生きなければならない」
という主題は共通なるも。
お暇なときにでも、一読を。
風立ちぬ 宮崎駿監督作品
東宝
248円(ゲオ)